北千住駅西口から徒歩3分ほど、千住2丁目の賑やかな商店街から一歩足を踏み入れると広がっていたのは、まさに「異世界」でした。当時の若者たちがなぜあれほど熱心にこの店を予約し、愛着を抱いていたのかを振り返ると、極めて緻密に計算された空間演出とメニュー構成がありました。
店内はまるで中世ヨーロッパのワインセラー(カーヴ)を掘り進めたかのような土壁風の質感で統一され、かがまなければ入れない「にじり口」のような個室、はしごを数段登って腰を下ろす中二階のロフト席、丸いドーム状の壁面に包まれるかまくら個室など、探検心をくすぐる仕掛けが満載でした。この徹底した「おこもり感」が、付き合いたてのカップルや距離を縮めたい男女にとって、周囲の視線を完全に遮断できる絶好のデートスポットとして機能していたのです。
料理面での絶対的エースは、なんといっても濃厚なチーズフォンデュでした。専用ポットでグツグツと温められた特製チーズソースに、バゲットや色とりどりの温野菜を絡めて頬張るスタイルは、2名利用時の親密なコミュニケーションを自然に生み出す名脇役でした。
さらに、カクテルやサワー、果実酒など100種類近くを取り揃えた飲み放題メニューは、20代の若者にとって極めてコストパフォーマンスが高く、2時間・3時間の飲み放題付きコースが3,000円台半ばから4,000円前後で楽しめる手頃さも、圧倒的な支持を集めた大きな理由でした。