「いるいる!こういう人!」と誰もが膝を打つ横澤夏子のネタのあるあるは、単なる誇張やステレオタイプの再現にとどまりません。その真骨頂は、対象となる人物の息遣い、声のトーンの変化、目線の泳ぎ方までをも完全に再現する驚異的な憑依芸にあります。
彼女の名を全国区に押し上げた代表作の一つが、『とんねるずのみなさんのおかげでした』の名物コーナー「博士と助手〜細かすぎて伝わらないモノマネ選手権〜」で披露された「合唱コンクールの練習をまとめる音楽の先生」でした。クラスメイトの男子に向かって「ちょっと男子、真面目に歌って!」と叫びつつ、どこか自分に酔っている音楽教師のアンビバレントな心情を見事に描き出し、視聴者と審査員を唸らせました。このネタは、彼女自身が学生時代に合唱部の部長を務めていた際の実体験と、周囲の教師や同級生を冷静に見つめていた現場観察メモの蓄積から結晶化したものです。
もう一つの金字塔が、自らの赤裸々な体験を昇華させた婚活パーティーのネタです。横澤夏子はかつて、理想のパートナーを見つけるために実に100回以上の婚活パーティーや相席居酒屋に足を運んだと公言しています。そこで出会った「自分のアピールに必死な女性」や「品定めするような視線を送る参加者」の生態を徹底的にノートに記録し、哀愁と滑稽さを織り交ぜた一人コントへと昇華させました。彼女の笑いに血が通っているのは、観察対象を嘲笑うのではなく、自らもその泥沼に身を投じた「当事者としての痛み」を知っているからにほかなりません。