なぜ事実婚や単なるパートナーシップでは駄目だったのか。そこには、現在の日本社会が抱える根深い制度的欠陥がある。集中治療室での面会制限、手術の同意書、救急搬送時の連絡先、そして遺体の引き取りや遺品・財産の整理に至るまで、病院や行政は「戸籍上の家族」を絶対視する。
任意後見制度や遺言公正証書といった民事の手続きも存在するが、医療現場の緊迫した場面では通用しないケースが少なくない。他人がどれほど深い愛情と覚悟を持って介護に尽くしていても、法律上の「赤の他人」は締め出される。法的な配偶者になることは、色川氏の尊厳を守り、その遺志を確実に執行するための唯一の突破口だったのだ。