一躍「時の人」となった尾畠さんに対し、国や自治体、警察関係から数々の表彰や叙勲の打診がありました。しかし、尾畠さんはその多くを辞退しています。
なぜ名誉ある表彰を断るのか。その理由は、単なる謙虚さだけではありません。手記や過去のインタビューにおいて、尾畠さんは次のような確固たる信条を明かしています。
「私は名誉や賞状をもらうために泥をかいているわけではない。被災地で家族や家を失って泣いている人がいるのに、自分が表彰されて喜ぶわけにはいかない」
見返りや承認を一切求めず、困っている誰かのために体を動かすこと自体が完結した目的であるという、純粋な利他精神の表れです。
また、ネット上では「家族と絶縁しているのではないか」「妻と不仲なのではないか」といった根拠のない噂が飛び交うことがありました。しかし、これらは事実とは異なります。
尾畠さんには妻・清子さん、そして一男一女のお子さんがいます。65歳で鮮魚店を閉めた際、尾畠さんは妻に対して「これまで家族のために働いてきた。残りの人生は好きなように社会のために使わせてほしい」と頭を下げて感謝を伝え、互いに自立した生活スタイル(いわゆる「卒婚」に近い形)を選択しました。家族は尾畠さんの意志を尊重し、陰ながらその健康と活動を温かく見守っています。