「冷麺」と一口に言っても、地域によって麺の質感やスープには驚くほどの多様性があります。
まず本場の韓国冷麺は、主にスープに浸った「水冷麺(ムルレンミョン)」と、唐辛子ベースの甘辛ダレで和える「ビビン冷麺」に分かれます。そば粉がベースの極細麺で、噛み切るのが難しいためハサミで切ってから食べるのが一般的です。
日本で独自の発展を遂げた代表格が盛岡冷麺です。1954年に盛岡で開業した「食道園」の店主(朝鮮半島出身)が、故郷の味を再現しようと試行錯誤する中で誕生しました。そば粉を使わずに小麦粉とでんぷんを用い、押し出し機で強い圧力をかけて製麺することで、ツルツルとした喉越しとゴムのように力強いコシを実現。コク深い牛骨スープに、辛味調整用のカクテキ(大根キムチ)を合わせるスタイルが定着しました。
さらに九州を代表する別府冷麺も見逃せません。昭和20年代に旧満州から引き揚げてきた料理人が別府で開いた店が発祥とされ、そば粉と小麦粉、でんぷんをブレンドした太麺が特徴です。スープは牛骨ではなく和風の魚介出汁(鰹や昆布)をベースにしており、具材には白菜ではなくキャベツのキムチを使うなど、独自の和洋折衷な進化を遂げています。