息切れの正体は難病?慢性血栓塞栓性肺高血圧症の症状と最新治療

息切れの正体は難病?慢性血栓塞栓性肺高血圧症の症状と最新治療

息切れの正体は難病?慢性血栓塞栓性肺高血圧症の症状と最新治療の基礎知識と応用に迫る! 専門的な視点でまとめました。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症の最も厄介な特徴は、初期段階における特徴的なサインの乏しさにあります。発症初期に現れる主訴は「労作時の息切れ」「全身の倦怠感」「動悸」といった非特異的なものにとどまり、健康診断の胸部X線検査や心電図検査でも軽微な異常しか検出されないケースが少なくありません。その結果、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、更年期障害、あるいは心因性ストレスと診断され、確定診断に至るまで平均して1年から2年以上もの歳月を費やしてしまうという実態が学会報告でも指摘されています。

病状が進行すると、肺高血圧に伴う右心室への過剰な負荷から「足の強いむくみ(浮腫)」「腹部膨満感」「胸痛」「立ちくらみ・失神」といった右心不全症状が顕在化します。失神が起きた段階では肺動脈の閉塞が相当広範囲に及んでいる可能性が高く、一刻を争う救急受診が必要です。「平地を歩く分には問題ないが、坂道や荷物を持った歩行で異常な息切れを覚える」という自覚症状こそ、最初にして最大の警告シグナルと言えます。

病理学的な背景を整理すると、本症は「深部静脈血栓症」や「急性肺血栓塞栓症」と密接に関連しています。いわゆるエコノミークラス症候群として知られる深部静脈血栓症では、主に下肢の太い静脈内に血の塊が生じます。これが血流に乗って肺動脈へ運ばれ、突発的に詰まる急性病態が肺血栓塞栓症です。急性期の血栓は通常、抗凝固療法によって数週間から数カ月で溶解・消失します。しかし、何らかの理由で血栓が溶け残り、血管内皮細胞や線維芽細胞を巻き込んで硬い瘢痕組織(器質化血栓)へと変化し、肺血管を恒久的に狭窄させてしまうのが慢性血栓塞栓性肺高血圧症です。急性発症から半年以上が経過した後に、じわじわと息切れが現れてくる経過が典型的なパターンです。

佐藤 大輔
著者

佐藤 大輔

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。