この騒動において、もっとも深刻な板挟みに苦しんだのが、沙知代氏の夫であり日本プロ野球界の至宝・野村克也氏でした。当時、阪神タイガースの監督としてチーム再建に心血を注いでいた野村監督の元には、グラウンド外での妻のトラブルに関する質問が毎日のように浴びせられました。
「男の戦場に、女房のことで水を差されたくない」「家庭と仕事は別だ」と語り、当初は妻を庇い続けていた野村監督でしたが、報道陣の執拗な囲み取材とチームの成績低迷が重なり、その表情には日を追うごとに苦悶の色が濃くなっていきました。後年の手記や特番インタビューにおいて、野村氏は当時の心情をこう吐露しています。
「世間から見れば悪妻かもしれないが、私にとっては人生最大の恩人であり、最愛の伴侶だった。だが、あの時期ほど精神的に追い詰められたことはなかった」
2001年12月、妻の脱税逮捕の報を受けた野村克也氏は、即座に球団へ辞任を申し入れ、阪神タイガース監督の座を辞することとなりました。球界を代表する名将が、グラウンドの外側で巻き起こった騒動によって指揮権を奪われるという結果は、多くのプロ野球ファンに深い失望と痛恨の念を残しました。