本作のクリエイティブを牽引する存在として熱い注目を集めているのが、是枝裕和監督の参画だ。これまで家族や社会の暗部を繊細な眼差しで切り取ってきた名匠が、本作ではジャンルの境界を軽やかに踏み越えている。
眼を見張るのは、観察眼に満ちたネイチャードキュメンタリーの手法と、息詰まる心理戦を描く環境サスペンスの構造的ハイブリッドだ。森の微細な生態変化がそのまま登場人物たちの心理的崩壊や疑惑と同期していくプロットは、これまでの日本映画には見られなかった緊張感を生み出している。人間の都合を一切受け付けない自然の沈黙が、逆に人間のエゴを痛烈に暴き立てていく。