イタリア本国において「パスタ・アッラ・ディスペラータ(Pasta alla disperata)」と呼ばれる料理がその原点とされる。直訳すれば「絶望のパスタ」だが、その名の由来には諸説ある。最も有力なのは、「パントリーにロクな食材がなく、絶望的な状況でも手元にある材料だけでパッと作れる」という極貧レシピ由来の説だ。唐辛子、ニンニク、オリーブオイル、そしてアンチョビや缶詰のオリーブといった保存食を放り込んで作る手軽な料理だった。
しかし、日本におけるこの料理の文脈は少し異なる。1980年代に新宿の老舗イタリアン「ホームパスタ」が提供し始めたスープ仕立ての一皿が、日本の絶望パスタの原点だ。あまりの美味さに「どんなに絶望している時でも、食べれば元気になる」「あまりに美味しくて、他のパスタが食べられなくなるのが絶望的だ」という真逆の意味合いが込められるようになったのである。