ネット上の掲示板やSNSでは、「換気扇を最強にしたら部屋の空気が劇的に綺麗になる」「吸引力を上げれば上げるほど安全」といった言説が散見されます。しかし、ビルメンテナンスの設備技師や空調エンジニアに取材すると、全く正反対の過酷な現実が浮かび上がってきます。
「負圧は強ければいいというものでは決してありません。むしろ、負圧が過剰になると建物の基本機能が次々と崩壊していきます」と、都内の大規模商業ビルを管理する技術担当者は明かします。給気量を無視して排気ばかりを強化すると、室内が想定以上の強負圧に陥り、玄関ドアが重力に逆らうように固着して大人の力でも開かなくなったり、サッシの隙間から「ピピー」「ヒュー」という不快な風切り音が鳴り響いたり、排水トラップの封水が吸い出されて下水臭が逆流するといったトラブルが頻発するのです。
こうしたトラブルを未然に防ぐ計器が「負圧計」です。設備管理や自動車整備で目にする負圧計には、大きく分けてブルドン管を用いたアナログメーターと、半導体ピエゾ抵抗素子を搭載したデジタル差圧計が存在します。
負圧計の仕組みと見方において初心者が戸惑いやすいのが、目盛りの表記ルールです。アナログ計器の多くは針がゼロから左(時計と逆回り)へ振れるマイナス表記になっており、単位には「kPa(キロパスカル)」や古くからの「mmHg(水銀柱ミリメートル)」が使用されます。例えばエンジンのインテーク負圧を測る場合、アイドリング状態でおおむね-50〜-70kPa(約-400〜-500mmHg)前後の数値を示していればバルブやピストンリングの密閉性が正常であると判断できます。針が不規則に小刻みに震えている場合は点火不良やバルブの密着不良、針の戻りが鈍い場合は排気系の詰まりなど、負圧計の針の挙動一つで内部の機械的コンディションを非破壊で克明に診断できるのがプロの現場の知恵です。