点字ブロックの多くが鮮やかな「黄色」で作られていることには、視覚心理学に基づいた明確な理由があります。多くの人は「点字ブロック=全盲の人のためのもの」と考えがちですが、実態は大きく異なります。
視覚障害者の中で、光を全く感じない全盲の割合は全体の約1〜2割程度にとどまり、残る約8〜9割は「ロービジョン(弱視)」と呼ばれる、視覚に何らかの残存能力がある人々です。ロービジョンの人にとって、移動時に最も重要な情報源となるのが「周囲の床材との明度差(輝度比・コントラスト)」です。
道路の一般的なアスファルト(濃いグレーや黒)や、駅構内のコンクリート(薄いグレー)に対して、黄色はもっとも高い輝度対比を確保できる色です。さらに、視覚特性として黄色は網膜の錐体細胞を強く刺激し、薄暗い夕暮れ時や雨天時でも遠くから際立って認識しやすいという光学的な利点があります。
国土交通省の「バリアフリー整備ガイドライン」やバリアフリー新法においても、ブロックの色は「原則として黄色、または周囲の路面との輝度比が十分に確保できる色」と明確に規定されています。点字ブロックの黄色は、触覚だけでなく「残された視覚を最大限に生かす」ための命のシグナルなのです。