本作の卓越したクオリティを支える最大要因の一つが、名匠・影山楙倫監督による洗練された演出手腕である。数々のアニメ作品で手腕を振るってきた同氏のディレクションは、登場人物の心理描写や視線・仕草の微細な変化において群を抜いている。特に青春ラブコメというジャンルにおいて、登場人物が抱える言葉にできない焦燥感や恋心を映像として美しく結晶化させる手腕は見事だ。
実在感のある教室の匂いや夕暮れの街並み、通学路の風景など、学園アニメとしての美学が画面の隅々にまで行き渡っている。監督の計算し尽くされたカット割りや演出テンポは、現代の鋭い目を持つ視聴者が観ても鮮烈な驚きを与える。単なる記号化されたキャラクターではなく、生きた人間としての情動を描き切ったことが、本作を特別な名作たらしめている理由である。