この美術館の最大の目玉は、歴史の荒波をくぐり抜けてきた自動演奏楽器のコレクションだ。中でも人々の目を引くのが、あの悲劇の豪華客船「タイタニック号」に搭載される予定だった自動演奏楽器(オーケストリオン)である。製作が遅れたために乗船を免れ、今もなお現役で美しい音色を響かせているというエピソードは、聴く者のロマンを刺激してやまない。
デジタル音源が主流となった現代において、歯車と空気圧、そして金属のピンが織りなす物理的な「生演奏」は、驚くほど温かく、そして力強い。ホール全体が巨大な楽器と化し、音が空気を震わせて体に伝わってくる感覚は、サブスクの音楽配信では絶対に味わえないものだ。100年以上前の人々が聴いていたものと全く同じ音が、今、私たちの耳に届いている。その奇跡に、ただ圧倒される。