自動車のエンジンを始動させる際、セルモーターには瞬間的に数百アンペア(A)という極めて巨大な電流が流れます。この過酷な要求に応えるため、自動車用鉛蓄電池の内部には高度な構造的工夫が凝らされています。
外装ケース(電槽)の内部は6つの独立した部屋(セル室)に仕切られており、それぞれの部屋に「極板群」が収められています。極板群は、鉛合金で作られた格子状のフレームに活物質(正極は二酸化鉛ペースト、負極は海綿状鉛ペースト)を塗り固めた極板を、ショート(短絡)を防ぐ多孔質の絶縁体「セパレータ」を挟んで何枚も交互に重ね合わせた構造です。
極板の表面積を広げて枚数を増やすほど、化学反応が起きる面積が拡大し、より大きな瞬間電流を取り出すことが可能になります。近年普及しているアイドリングストップ車(ISS)用バッテリーでは、信号待ちのたびに繰り返される頻繁な大電流放電と急速充電に対応するため、極板を薄型化して枚数を増やし、電極ペーストの密度や配合を最適化することで充電受入性能を飛躍的に高めています。
また、電解液が液体として満たされている従来の「開栓型(液式)」に加え、電解液をガラスマットに浸み込ませて密閉した「AGM(Absorbent Glass Mat)バッテリー」やゲル状にした「GELバッテリー」などの制御弁式(VRLA)鉛蓄電池も、欧州車や高機能EVの補機電源を中心に広く採用されています。