「伝わりますか」という言葉がビジネスシーンで敬遠される最大の理由は、文意の主語が「相手の理解能力」に向いてしまう点にあります。
文法上、「伝わる」は自動詞ですが、これを相手に向けて「伝わりますか?」と問いかけると、実質的には「私の話している高度な内容を、あなたの読解力や理解力で把握できましたか?」と相手の能力をテストする響きを帯びてしまいます。目上の人間やクライアントに対し、部下や発注側が相手の力量を値踏みするような構図が自然と成立してしまうわけです。
また、語尾に「〜でしょうか」を足して「伝わりますでしょうか」と変形させても、本質的な解決にはなりません。「〜でしょうか」は丁寧さを添える表現ですが、相手の理解力を問う矢印の向きそのものは変わらないため、言葉の専門家や厳格なビジネスマナーを重んじる層からは「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」と判定されます。
日本語のビジネスメール敬語マナーにおける大原則は、「伝わらない原因は、すべて説明する側の拙さにある」というへりくだりの姿勢です。「あなたの理解力はどうですか?」と相手側にボールを投げるのではなく、「私の説明に不足はなかったでしょうか」と自分側に引き受ける姿勢こそが、相手を不快にさせない最低限の防壁となります。