ここで、cafe&bar natural stanceにまつわる代表的な3つの誤解を是正しておきます。
第一に、「ブームが去って客足が途絶えたために潰れた」という見方は明らかな誤りです。営業最終盤までランチタイムや週末のカフェタイムにはウェイティングが発生しており、支持を失ったわけではありませんでした。原宿という特殊な商圏では、客足があっても坪賃料の上昇幅が営業利益を圧迫するという現象が頻発します。
第二に、「完全にチェーン展開していた大手資本の店」という認識も正確ではありません。ブランドイメージを徹底して守り、マニュアル一辺倒ではない温かみのあるサービスを提供していた独立系・少数精鋭型のオペレーションでした。だからこそ、画一的なカフェにはない独自の空気感が漂っていたのです。
第三に、「夜のバータイムは常連専用で敷居が高かった」という噂も実態とは異なります。昼はカフェ、夜はダイニングバーという形態をとっていましたが、初めて訪れた客に対しても気さくなバーテンダーが好みに合わせたカクテルを提供しており、間口の広い店舗でした。
【プロの結論】裏原宿カルチャーの歴史から学ぶサードプレイスの価値と判断基準
都市社会学の観点から見ると、cafe&bar natural stanceのような店舗は、家庭(第1の場)でも職場・学校(第2の場)でもない、精神的な解放区としての「サードプレイス」の条件を完璧に満たしていました。原宿という刺激の強いカルチャー発信地において、情報過多から逃れて心を整えるアサイラム(避難所)の役割を果たしていたのです。
この名店の軌跡を踏まえ、現代の私たちが東京の街で「後悔しないカフェ・サードプレイス」を見出すための判断基準を整理します。
【このようなカフェを選ぶべき人(相性が良い条件)】
・1回あたりの滞在時間(1〜2時間)の快適性や、席と席のゆとりを重視する人
・SNS向けのビジュアルだけでなく、フードの調理技術や珈琲の抽出精度を求める人
・地下や路地裏など、喧騒から切り離された静穏な空間で思考や対話を深めたい人
【現代のトレンド型カフェへ向かうべき人(慎重になるべき条件)】
・テイクアウト中心で、短時間で手軽に最新トレンドドリンクを楽しみたい人
・自然光が入る明るい白基調の空間で、自撮りやアイテム撮影をメイン目的にしたい人
・事前のモバイルオーダーや完全キャッシュレスなど、極限まで合理化されたスピード決済を好む人
店舗が物理的に消滅しても、そこで過ごした居心地の良い体験基準は読者の中に残り続けます。新しいお気に入りのカフェを探す際は、単なる立地や知名度ではなく「空間が自分に与えてくれる精神的余裕」を指標に選ぶことが肝要です。