日本国内の救急搬送現場や急性期病棟において、圧倒的なスピード感をもって使われ続けているのがJCS判定基準(ジャパン・コーマ・スケール)です。1974年に脳神経外科医の太田富雄氏らによって開発されたこの方式は、重症度を直感的に共有できることから「3-3-9度方式」とも呼ばれています。
JCSの最大の強みは、「刺激を必要としない(1桁)」「刺激によって覚醒する(2桁)」「刺激をしても覚醒しない(3桁)」という明快な3段階をベースに、それぞれをさらに3段階に細分化して全9段階(正常な意識清明である「0」を含めると10段階)で表す点にあります。
JCS(3-3-9度方式)の完全分類表
- 【I. 刺激しないでも覚醒している状態(1桁)】
- JCS 1:だいたい意識清明だが、今ひとつハッキリしない。会話のテンポが鈍い。
- JCS 2:時・場所・人物の見当識が失われている(見当識障害)。
- JCS 3:自分の名前や生年月日が言えない(自分の素性が言えない)。
- 【II. 刺激すると覚醒する状態(2桁)】
- JCS 10:普通の呼びかけで容易に開眼し、合目的な会話や動作ができる。
- JCS 20:大きな声で呼びかけたり、体を揺さぶることで開眼する。止めると眠り込む。
- JCS 30:痛み刺激を加えつつ呼びかけを続けないと開眼しない。
- 【III. 刺激をしても覚醒しない状態(3桁)】
- JCS 100:痛み刺激に対して、払いのけるような合目的な動作(逃避運動)をする。
- JCS 200:痛み刺激に対して手足を少し動かしたり、顔をしかめる程度の反応。
- JCS 300:痛み刺激に対して全く反応しない(除皮質硬直・除脳硬直などの異常姿勢が現れる場合もある)。
臨床の初学者や救護者が覚える際の鉄則となるジャパンコーマスケール覚え方の極意は、「桁数」と「刺激の質」を直結させることです。「1桁=言葉の乱れ(見当識の崩壊)」「2桁=声や揺さぶりで目を開ける(開眼する)」「3桁=どれだけ痛めつけても目は開かない」という3階層のリズムで頭に叩き込むと、極度の緊張下でも瞬時にスケールを弾き出すことが可能になります。
さらに現場では、不穏状態を伴う場合は「JCS 30-R(Restlessness)」、便や尿の失禁を伴う場合は「JCS 10-I(Incontinence)」、自発的な動作が全く見られない無動症の場合は「JCS 2-A(Akinetic mutism)」のように付加記号を添えて病態の解像度を高める運用が定着しています。