びわを扱う上で、美味しさ以上に絶対に知っておかなければならないのが「種子」の取り扱いだ。数年前からネット上や一部の民間療法において「びわの種子はがんに効く」「驚異の健康食品」といった誤った言説が流布されたが、これには極めて深刻な健康リスクが潜んでいる。
びわの種子や未熟な果実には、「アミグダリン」や「プルナシン」と呼ばれる青酸配糖体(シアン化合物)が高濃度に含まれている。この物質自体は無毒であるものの、人間の体内で咀嚼や消化酵素(エムルシンや腸内細菌のβ-グルコシダーゼ)と接触・分解されることで、猛毒であるシアン化水素(青酸ガス)を遊離・発生させる。
農林水産省および消費者庁は、シアン化合物を高濃度に含む「びわの種子を粉末にした食品」等に対して度重なる報道発表を行い、基準値を超えるシアン化合物が検出された製品の自主回収と販売中止を指示してきた経緯がある。青酸中毒を発症すると、頭痛、めまい、嘔気、呼吸困難などを引き起こし、最悪の場合は死に至る危険性がある。
「昔からビワ酒やビワ茶があるではないか」という反論もあるが、伝統的なビワ種酒は、アルコールと糖分による抽出過程でシアン化合物が徐々に分解・揮発し、かつ種そのものを噛み砕いて直接摂取するわけではない。しかし、家庭で生の種をすり潰してスムージーに入れたり、炒って粉末にして日常的に摂取したりする行為は絶対に避けるべきである。丸ごとの種を誤って1個飲み込んでしまった程度であれば、硬い外皮に守られて消化されずにそのまま排出されるため過度な心配は不要だが、意図的に種を砕いて食べることは明確な生体リスクを伴う。