普段、野原で見かけるバッタは単独行動を好み、周囲を警戒して逃げ回るおとなしい昆虫です。この通常の状態を「孤独相(こどくそう)」と呼びます。しかし、ある特定の環境条件が揃うと、外見も行動も全く異なる「群生相(ぐんせいそう)」と呼ばれる形態へと劇的な相変異(そうへんい)を起こします。
発生の引き金となるのは「干ばつの後の集中豪雨」と「過密状態」です。大雨によって植物が一気に繁茂するとバッタの産卵と孵化が爆発的に増加します。その後、乾季に入り餌場が狭まることで幼虫同士が高密度で密集。互いの脚や触角が触れ合う刺激を受け続けることで、体内でセロトニンなどの神経伝達物質が分泌され、相変異のスイッチが入ります。
孤独相と群生相の主な違いは以下の通りです。
- 体色と形態:孤独相は草木に隠れる緑色や褐色ですが、群生相は黒と橙(黄色)の毒々しい警戒色へと変化。翅が長く伸び、長距離飛行に適した体型になります。
- 行動パターン:孤独相は単独で活動し共食いはしませんが、群生相は極めて獰猛で集団行動を好み、仲間と共に風に乗って1日100キロメートル以上も移動します。
- 食欲と繁殖力:群生相はあらゆる植物、時には樹皮や布、仲間の死骸まで猛烈な勢いで貪り尽くします。