今日の大嶽部屋の活況を語るうえで避けて通れないのが、2010年に角界を揺るがした激震と、そこからの苦難に満ちた再生プロセスです。大鵬部屋から大嶽部屋へと名を変え、大鵬の娘婿であった元関脇・貴闘力が16代大嶽として部屋を率いていた当時、野球賭博問題への関与によって日本相撲協会から解雇処分を受ける事態が発生しました。
部屋の取り潰しや力士たちの散り散りすら懸念された極限状態のなか、火中の栗を拾う形で師匠を引き受けたのが、大鵬の愛弟子であった元十両・大竜の17代大嶽親方(大竜忠博)でした。大竜は現役時代、関取在位は通算5場所と決して華々しいスター力士ではありませんでしたが、実直な人柄と誠実な仕事ぶりで大鵬からの信頼が極めて厚い人物でした。
「師匠が命を削って残した大鵬道場の看板を絶対に消してはならない」という強い覚悟のもとで継承された大嶽部屋は、当初はスポンサー離れや世間の厳しい批判に晒されました。しかし、17代親方は一切の弁解をせず、朝の掃除から土俵の手入れ、若手の生活指導に至るまで自ら泥にまみれて徹底しました。その姿勢はやがて地域社会や相撲ファンの信頼を取り戻す礎となったのです。
ネット上には過去のトラブルを混同した誤った書き込みが散見されることもありますが、現在の17代大嶽体制は相撲協会内でも規律正しくクリーンな部屋として認知されています。貴闘力の息子たちである王鵬や夢道鵬を預かり、関取へと育て上げた親方の手腕は、角界関係者からも惜しみない賛辞が送られています。