インターネット上の掲示板やSNSでは、解散発表時から現在に至るまでミッシェルガンエレファント 不仲説が根強く語られてきました。特に「絶対的カリスマであったチバユウスケと、唯一無二のギターカッティングを誇ったアベフトシが殴り合いの喧嘩をして口を利かなくなった」「ベースのウエノコウジやドラムのクハラカズユキが板挟みになっていた」といった刺激的な言説が独り歩きしています。
しかし、当時のツアースタッフや音楽関係者の証言、そしてメンバー自身が後年に残した回想録を検証すると、私生活における憎悪や絶縁といった事実は認められません。実際の関係性は「馴れ合いを徹底的に排除した、極めてストイックな職人同士の信頼関係」でした。
スタジオで音を鳴らす際、彼らは互いに一切の妥協を許しませんでした。チバが要求するビートやテンポ、アベが繰り出す鋭角なカッティング、ウエノが唸らせるドライブ感あるベースライン、クハラの強靭なドラミング。互いに背中を預け合い、120%の力でぶつかり合うセッションを何年も続けた結果、精神的・肉体的な摩耗が限界に達していたのは事実です。それは私生活の「不仲」という矮小な言葉で片付けられるものではなく、「音を通してしか会話できなかった男たちが、音での対話を極限までやり尽くした結果の沈黙」でした。