警察の相談窓口や被害者支援センターに寄せられる手記・相談記録を検証すると、事態を劇的に悪化させてしまった被害者の多くが、初期段階で「直接会って誠意を尽くして断ろうとした」という共通の行動を取っています。
「最後にもう一度だけ会って話をしたい」「誤解を解きたい」と哀願する元交際相手に対し、情に流されてファミレスやカフェで対面した結果、相手は「会ってくれた=まだ自分に気がある」「押せば応じる」と都合よく解釈します。臨床心理の現場でも、執着気質の人間に対して対話を試みることは、相手の妄想を補強する「正の強化」として働いてしまうことが指摘されています。
ある被害女性の手記には次のように記されています。
「『別れたい理由を納得いくまで説明してほしい』と言われ、何度もLINEで長文のやり取りを重ねました。しかし、何を言っても『直すからチャンスをくれ』『俺への当てつけか』と話がループするだけ。返信を少しでも遅らせると深夜に鬼電が鳴り、自宅のインターホンを連打されるようになりました。『誠意を持って説明する』こと自体が、彼にとっては執着を続けるためのガソリンだったのだと後から気付きました」
加害者にとって会話の内容は重要ではありません。「相手と接点を持ち続けている」という事実そのものが、彼らの歪んだ支配欲を満たす快感物質となっているのです。したがって、「情けをかけた対話」は最も避けるべき危険行為です。