映画『ファースト・ラヴ』の最大の推進力は、登場人物一人ひとりが抱える心の傷と、互いに影響し合う濃密な人間関係です。堤幸彦監督の緻密な演出のもと、キャスト陣が見せた緊迫感あふれる相関関係を整理します。
主人公の臨床心理士・真壁由紀(北川景子)は、アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜(芳根京子)による父親殺害事件のノンフィクション執筆を依頼されます。環菜の弁護を担当するのは、由紀の夫の弟であり、由紀自身の過去を知る弁護士・庵野迦葉(中村倫也)。由紀の最良の理解者であり迦葉の兄でもある写真家・真壁我聞(窪塚洋介)が二人を温かく支える一方で、環菜の母・聖山昭菜(木村佳乃)の不可解な証言が事件を混迷へと導きます。
物語の根底には、由紀と迦葉が共有する「かつての痛み」、そして環菜を取り巻く歪んだ家族関係が鏡のように重なり合う構図が存在します。単なる法廷劇にとどまらず、取材者と被疑者が互いの記憶を共鳴させながら心の深淵へと潜っていくプロセスこそが、本作の真骨頂です。