日本国内に生息するクマは、北海道全域に生息する「エゾヒグマ」と、本州および四国に生息する「ツキノワグマ」の2種類が存在します。両者の体重差や生態的特質には顕著な開きがあり、遭遇時のリスク構造も明確に分かれます。
ヒグマとツキノワグマの対処の違いにおける最大のファクターは、体格差と肉食性・執着心の強さです。オスの成獣で200〜300kgを超える巨体を持つヒグマは、一度倒した獲物や奪った持ち物(ザックや食料)に対する所有執着が猛烈に強く、力技で人間を制圧します。人間を完全に捕食対象と見なして執拗にストーキングする個体も存在するため、ザックを捨てて気を引く行為は「ザック=餌」と学習させるリスクがあり、原則推奨されません。
一方、本州のツキノワグマは体長110〜140cm、体重40〜80kg前後と中型犬を一回り大きくしたサイズ感ですが、前足の鉤爪は鋭く、爪の一撃で人間の顔面や頭蓋骨を粉砕する破壊力を持ちます。ツキノワグマの人的被害の約7割は「見通しの悪い藪や曲がり角での突然の遭遇(バッタリ遭遇)」によるパニック的攻撃です。ツキノワグマは相手を一撃して怯んだ隙に逃走する傾向が強いため、突発遭遇時の瞬間的なガードが文字通り生死を分けます。