国語科教員が定期テストで「すなる」と「するなり」の識別を好んで出題するのには、明確な教育的理由があります。外見上は同じ「なる/なり」という文字列でありながら、直前の活用語の形を見るだけで、文法知識が定着しているかどうかが客観的に判定できるためです。
文法識別を完璧にするための公式は、直前の「接続」の確認に尽きます。
1. 「すなる」の「なる」=伝聞・推定の助動詞
直前にある語はサ変動詞「す」の終止形です。伝聞・推定の助動詞「なり」は終止形(ラ変型には連体形)に接続するという厳格な規則があります。したがって、ここは「男が書いていると耳にする(伝聞)」あるいは「男も書いているらしい(推定)」と解釈するのが文法的に正しくなります。平安時代当時、漢文で公的な記録日記をつけるのは男性官人の仕事でした。女性はその様子を噂や伝え聞きとして知っていたため、伝聞の助動詞が選択されています。
2. 「するなり」の「なり」=断定の助動詞
文末の「するなり」の直前を見ると、サ変動詞「す」の連体形「する」が置かれています。連体形および体言に接続する「なり」は、断定・存在の助動詞です。文末で力強く「書くのである(断定)」と言い切る形を取っています。
また、「女もしてみむとて」における意志の助動詞「む」の識別も見逃せません。「む」には【推量・意志・勧誘・適当・仮定・婉曲】という6つの主要な意味が存在しますが、主語が一人称(書き手自身)である場合は原則として「意志(〜しよう)」と判断します。この一文だけで、古典文法の基礎判定ルールが網羅されているのです。