現在、マスメディアや公教育の現場で「ホッテントット」という単語の使用が固く禁じられているのはなぜでしょうか。その理由は、単語の誕生そのものが侮蔑と嘲笑に根ざしているからです。
1652年、オランダ東インド会社のヤン・ファン・リーベックがケープタウンに補給基地を建設した際、入植者たちは先住民が話す言語を耳にしました。彼らの言語であるコイサン諸語には、舌を上あごや歯に打ち付けて音を出す「吸気音(クリック音)」が無数に含まれています。
ヨーロッパ人にとって理解不能だったその言語体系を、オランダ人たちは「どもり」「舌足らず」と見なし、オランダ語の「hot-en-tot(吃音者、口ごもる者)」という擬音語をそのまま民族の呼称として投げつけました。つまり、言語障害をからかうニュアンスをそのまま人種名に転用したのがこの言葉の起源です。
その後、入植者たちは家畜の強奪や土地の収奪を繰り返し、ヨーロッパから持ち込まれた天然痘の流行によってコイコイ人社会は壊滅的な打撃を受けました。19世紀から20世紀のアパルトヘイト政策下では、コイコイ人の子孫たちは「カラード(混血有色人種)」という大枠の行政区分に押し込められ、独自の言語や伝統文化を名乗ることすら禁じられる歴史的断絶を経験したのです。