牛すじの仕上がりを左右する工程の8割は、味付け前の下処理(下茹で)で決まります。特にアキレス腱やメンブレン(ハラミ周辺の膜)、赤身スジが混ざる市販の牛すじには、血液成分や酸化した脂、独特の獣臭が含まれています。これらを徹底的に除去するステップが「2回の茹でこぼし」です。
1回目の下茹では、たっぷりの水に牛すじをそのまま入れ、強火にかけます。沸騰してから約3〜5分間しっかりと泡立つ大量のアクと余分な脂を浮かせたら、ザルにあけて茹で汁をすべて捨てます。ここで流水を当てながら、肉の表面や脂の塊に付着した茶色いアクを指で丁寧に洗い落とすのがプロの現場の鉄則です。この段階で一口大(煮縮みを考慮して3〜4cm角)に切り分けます。
2回目の下茹ででは、鍋に洗った牛すじ、かぶるくらいの水、長ネギの青い部分1〜2本分、薄切り生姜1片分、酒大さじ2を投入します。ネギに含まれる硫黄化合物(アリシン)と生姜の辛味成分(ジンゲロール)が、加熱によって肉のアルデヒド系臭気成分を吸着・中和します。落とし蓋をして弱火で約1時間〜1時間半、竹串がスッと抵抗なく刺さる硬さになるまで煮込みます。この丁寧な工程を踏むことで、濁りのない澄んだベースが完成します。