「最高の食材があっても、揚げのひと手間を惜しめば台無しになる」。そう語るのは、店を牽引する職人の渡辺太一氏だ。渡辺太一氏の仕事は、毎朝の肉の目利きと丁寧な筋切りから始まる。肉の部位ごとに厚みや油の温度を細かく微調整する作業は、長年の経験と感性だけが頼りだ。
使用するパン粉の粒の大きさ、揚げ油の配合、そして油から引き揚げた後の余熱火入れ。数秒の狂いが肉汁の保持や衣の食感を左右する。揚げたての肉に包丁が入る瞬間、「ザクッ」という心地よい音が店内に響く。これこそが、伝統的なとんかつ文化を現代に進化させた職人技の結晶である。