マイクを通さずとも台詞が客席の隅々まで鮮明に届く劇団四季の舞台俳優や、緊急時でも瞬時に聞き取りやすい声を届けるNHKアナウンス室のアナウンサーたち。彼らに共通しているのは、母音の明瞭度と口腔・咽頭腔のスペース確保である。
軟口蓋(上あごの奥にある柔らかい部分)を自然に引き上げ、あくびの初期動作のような喉の奥の広がりを維持する。これにより、声帯で作られた小さな原音が咽頭腔で劇的に増幅され、前に飛ぶ「響き」へと変換される。力で押すのではなく、身体の空洞を共鳴箱として使いこなすことこそが、プロが実践する空間支配の神髄だ。