日本語における同音異義語・異字同訓の中でも、特に混同されやすいのが「勧める」と「薦める」です。文化庁の文化審議会国語分科会が示す『「異字同訓」の漢字の使い分け例』においても、両者には明確な意味の境界線が引かれています。
使い分けの根底にあるのは、対象が「相手の行動(アクション)」なのか、それとも「特定の人や物(オブジェクト)」なのかという点です。
まず「勧める」は、相手にある行動をとるように働きかける行為を指します。「勧誘」「勧告」「勧善懲悪」といった熟語からも分かる通り、相手の背中を押して行動を促す場面で用います。「加入を勧める」「休養を勧める」「食事を勧める」などがこれに該当します。
一方の「薦める」は、人や物が優れていることを示し、採用や購入、評価を促す行為です。「推薦」「推薦」「自薦」の漢字が示すように、「この人(物)は素晴らしいので選んでほしい」と相手に推し出す場面で使います。「後任に薦める」「名著を薦める」「地元の銘菓を薦める」といったケースです。
つまり、「推薦」の意味合いが含まれるなら「薦める」、「勧誘・促し」の意味合いが強いなら「勧める」と捉えるのが本質的な判断基準となります。