神経科学の世界では、この現象を「クロスモダリティ(多感覚統合)」と呼ぶ。人間が食べ物の味を認識する際、舌の味蕾から得られる情報は全体のわずか一部に過ぎない。味の輪郭を決定づけているのは、目から入る色彩情報と、鼻腔を抜ける香気成分だ。
赤い液体を目にした瞬間、脳は無意識に過去の記憶から「イチゴ」や「リンゴ」を連想する。そこに甘酸っぱいイチゴ特有の香料が加わることで、脳内で「これはイチゴ味だ」という明確な知覚が合成される。舌が味わっているのではなく、脳が五感のデータを照合して味を組み立てているのだ。