どこか芸名のようにも響く「米津玄師」という名前は紛れもない本名です。徳島県徳島市出身の彼は、幼少期から特異な感性と孤独感を抱えながら育ちました。過去の雑誌インタビューや特番の対談では、幼稚園時代に負った顔の怪我によって周囲との差異を強く意識した経験や、後に自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けたことなどを率直に明かしています。
その疎外感や違和感を昇華する手段として選んだのが、絵画と音楽でした。十代半ばでDTM(デスクトップミュージック)に出会い、バンド活動を経てたどり着いたのが、当時黎明期から発展期へと向かっていたニコニコ動画のボーカロイドシーンです。
2009年頃から「ハチ」名義でボカロPとしての活動を開始した米津玄師は、『結ンデ開イテ羅刹ト屍』『マトリョシカ』『パンダヒーロー』といった中毒性の高い楽曲を立て続けに発表。緻密に構築された変則的なビート、不協和音を巧みに操るメロディライン、自作のアニメーションMVによって、瞬く間にネットカルチャーの頂点に君臨しました。
その後、2012年に本名名義での1stアルバム『diorama』をリリースしてシンガーソングライターへ完全シフト。「自分の声で、より広い大衆に向けた普遍的なポップスを作る」という強い決意のもと、メジャーシーンへと本格進出を果たしました。