2021年10月、地元日本・北九州で開催された世界体操競技選手権大会の種目別ゆかで金メダルを獲得した直後、村上さんは突如として現役引退を発表しました。まさに世界女王の座に返り咲いた絶頂期での決断に対し、国内外から驚きの声が上がりましたが、その決断の裏には明確な3つの理由が存在していました。
第1の理由は、「目標の完全達成と完全燃焼」です。自国開催の東京オリンピックで個人メダルを獲得し、さらにその数か月後の世界選手権で頂点に返り咲いたことで、自身が追い求めてきた体操選手としての目標をすべて達成したという達成感がありました。本人の手記や会見でも「これ以上望むものはないと言えるほどやり切った」と語られています。
第2の理由は、「慢性的な腰痛と身体的限界」です。村上さんは現役中盤以降、重度の腰痛と常に隣り合わせでした。2019年の世界選手権代表選考では腰痛の悪化による棄権を余儀なくされるなど、日々の練習そのものが激痛との戦いでした。限界まで身体を酷使し続けた結果、これ以上の競技継続は選手生命のみならず今後の人生に重大なリスクを及ぼしかねないという冷静な判断がありました。
第3の理由は、「最高の笑顔で終わりたいという独自の美学」です。ボロボロになって衰退していく姿を見せるのではなく、世界一の演技を世界中の観客に披露した瞬間にユニフォームを脱ぐという引き際の美しさは、彼女が長年大切にしてきたプロフェッショナルとしての誇りそのものでした。