熱中症といえば、めまい、頭痛、高体温といった症状が真っ先に思い浮かびますが、実は消化器系に真っ先に異常が現れるケースは珍しくありません。体温が急激に上昇した際、人間の生体防御機能は脳や心臓を守るため、皮膚表面の毛細血管を拡張させて汗をかき、熱を体外へ逃がそうとします。このとき、熱中症の腸管虚血メカニズムと呼ばれる深刻な現象が体内で進行します。
全身の血液が皮膚表面へと優先的に配分される結果、胃や腸などの消化管に送られる血流量が一時的に激減します。血流が滞った腸粘膜は酸素と栄養が不足して機能不全に陥り、水分を正常に吸収できなくなります。これが、熱中症の下痢の原因として医学的に最も警戒される内臓機能低下の正体です。
さらに見逃せないのが、熱中症による自律神経の胃腸障害です。過酷な暑熱環境と脱水状態は、自律神経のバランスを急激に狂わせます。交感神経が異常に興奮した後に胃腸をコントロールする副交感神経との連携が崩れ、腸の蠕動(ぜんどう)運動が過剰になったり痙攣を起こしたりして、激しい腹痛とともに水様便が排出されてしまうのです。単なるお腹の冷えと侮ると、すでに体内で深刻な脱水症状と内臓障害が始まっている危険性があります。