罪数論を理解する上で最大の関門となるのが、「観念的競合」「牽連犯」「併合罪」「法条競合」という4つの類型の峻別です。司法試験や実務法曹の現場でも、訴因変更や適用条文の選択において激しい論争が巻き起こるポイントとなっています。
まず、観念的競合と同じく「科刑上一罪」とされるのが牽連犯(刑法54条1項後段)です。両者の決定的な違いは「行為の個数」にあります。観念的競合が行為1個であるのに対し、牽連犯は「複数の行為」が存在します。その複数の行為が、犯罪の性質上「手段と結果」という密接な牽連関係にある場合(例:住居に不法侵入して金品を盗む住居侵入罪と窃盗罪の関係)に牽連犯と認定され、観念的競合と同様に最も重い刑で処断されます。
一方、全く異なる扱いを受けるのが併合罪(刑法45条)です。併合罪は「確定裁判を経ていない複数の独立した行為による数罪」を指します。例えば、先週に万引き(窃盗)を行い、今週になって別件の喧嘩で相手を殴って怪我をさせた(傷害)場合、行為も時間も完全に別個です。この場合は実質的数罪として、刑法47条に基づき「重い方の罪の長期にその半分を加える」といった刑の加重計算が行われます。
さらに見落とされがちなのが法条競合(ほうじょうきょうごう)との違いです。法条競合とは、1つの行為が複数の刑罰法規の外観に当てはまるものの、法の趣旨や構造上、一方の法条が他方を完全に吸収・排除して「本来的一罪(最初から1罪しか成立しない)」となる現象です。例えば、人を殺害した場合、人の肉体を傷つけているため形式的には傷害罪にも該当しますが、殺人罪が成立すれば傷害罪は完全に包含され、殺人罪の1罪のみが成立します。