都内のグランメゾンで腕を振るう支配人や、現場でVIPをもてなすシニアソムリエへの取材によると、食事の席における「客のグラスの扱い」は、所作の洗練度を推し量る大きな指標になっているといいます。
「お客様がステムを無理に指先だけでつまんでプルプルと震わせていらっしゃるのを見ると、かえって落下の危険を感じてハラハラします」と都内有名ホテルのシェフソムリエは明かします。ステムを持つ際、指先だけでピンと挟む必要はありません。親指、人差し指、中指の腹を使い、ステムのやや下寄りを自然にホールドし、薬指と小指は軽く添える程度にするのが、力学的に最も安定するポジションです。
さらに現場で頻出するのが、立食パーティーでの取り回しです。片手に料理の皿、もう片方にワイングラスを持ちながら歓談する場面では、グラスの転倒や他者との接触事故が後を絶ちません。立食時における基本作法は、プレートの真上、ステムの最下部をしっかりと握り、グラスを胸元の高さで垂直に維持することです。歩きながら飲むのは避け、立ち止まって会話の合間に一口含み、すぐに胸の定位置に戻すのが周囲への気配りとなります。
なお、テイスティング審査員が披露する「プレート持ち」を一般レストランで真似する方がいますが、同席者から「ナルシストに見える」「見ていてヒヤヒヤする」というマイナス評価を受けるケースがSNSやアンケートでも散見されます。日常の会食では、奇をてらわずにステムを素直に持つのが、最も好印象を与える選択肢です。