「千葉で綺麗な海はどこにあるのか」「沖縄並みの透明度という噂は過大広告ではないのか」という疑問に対し、海洋データと地形学的アプローチから結論を出すとすれば、その答えは「条件さえ揃えば紛れもない事実である」となります。千葉県の海岸線は約534キロメートルに及び、東京湾奥部の内湾環境から、外洋の荒波に洗われるリアス海岸、白砂青松のロングビーチまで極めて多彩な表情を持っています。
内湾の海が濁って見える主因は、複数の都市河川から流れ込む豊富な栄養塩と、遠浅の泥質干潟、そして波浪による海底堆積物の巻き上げにあります。対照的に、勝浦市から館山市、南房総市にかけてのエリアは、太平洋を北上する温暖で不純物の極めて少ない暖流「黒潮」がダイレクトに接岸します。さらに、海岸構造が泥ではなく砂岩や凝灰岩からなる岩礁域、あるいは粗い石英砂で構成されているため、波が立っても粒子が水中に滞留しにくく、驚異的なスコープ(透視度)が維持されます。
地元観光関係者やダイビングインストラクターへの聞き取り調査でも、「初夏から初秋にかけて南東からの澄んだ黒潮分流が差し込む日の午前中は、水深5メートル底の小石や泳ぐ魚の影が水上からくっきりと目視できる」という証言が一致しています。ネット上の誇張されたレタッチ写真に騙されたと感じる人がいるのは、海の美しさが「常に一定」ではなく、気象潮汐条件に大きく左右される自然現象だからにほかなりません。