「西郷隆盛の真の写真が存在する」という言説で最も頻繁に引き合いに出されるのが、オランダ出身の宣教師グイド・フルベッキを囲む集合写真、通称「フルベッキ写真」です。
坂本龍馬、高杉晋作、桂小五郎、大隈重信ら幕末の英雄40名以上が一堂に会し、その中央付近に大柄な西郷隆盛が写っているとする説が雑誌やテレビ、インターネットで長年センセーショナルに語られてきました。もしこれが真実であれば世紀の大発見ですが、近年の歴史学・写真史の研究によってこの説は完全に否定されています。
現在判明している学術的結論は以下の通りです。
・撮影年代は幕末ではなく明治元年(1868年)〜明治2年(1869年)頃
・撮影場所は長崎の佐賀藩校「致遠館(ちえんかん)」
・写っているのは志士たちではなく、佐賀藩や他藩の上級武士の子弟・学生たち
・西郷と名指しされた大柄な人物も、全く別の塾生であることが確定
フルベッキ写真は幕末ミステリーの格好の題材となったものの、西郷隆盛の実像を証明する資料ではありませんでした。