八雲町で独自に発展した作風は「八雲彫り」と称され、その特徴はリアルな再現性にとどまらない抽象性とモダンなデザイン性にある。毛並みを写実的に彫るのではなく、刃物の切り跡そのものを幾何学的な面として残す技法は、当時の日本民芸界に大きな衝撃を与えた。
その八雲彫りを極致へと高めた伝説的な作家が、柴崎重行(しばざき しげゆき)だ。柴崎が考案した「ハツリ彫り」は、斧やノミの豪快な一打、ひと削りによって熊の骨格や筋肉の力強さを削り出す革新的な手法であった。無駄を徹底的に排除したその造形は、まるで西洋のモダニズム彫刻を彷彿とさせ、海外の美術批評家からも絶賛されている。柴崎重行の手による真作は流通数が極めて少なく、現在の市場では数百万円という最高値で取引される筆頭格となっている。