現在も松山市の「本家野球拳」として厳格に継承されているルールは、歌、三味線の伴奏、そして躍動感あふれる身振りが一体となった伝統芸能そのものです。一般に誤認されているような「負けたら衣服を1枚ずつ脱ぐ」といった下卑たルールは、本来の規約には毛頭存在しません。
本家野球拳の基本ルールと試合進行
本家野球拳は、基本的に2人の対戦形式で行われます。双方が向かい合い、三味線や太鼓の伴奏に合わせて歌い踊りながら、歌詞の節目でじゃんけんを行います。
- 歌の前半部分で、バッター(打者)とピッチャー(投手)の動きを模した所作をリズミカルに行う。
- 「アウト!セーフ!ヨヨイノヨイ」の掛け声の最後の「ヨイ」の瞬間に、右手を突き出してじゃんけんを出す。
- あいこの場合は「あいこでポン」ではなく、歌の後半部を繰り返して決着がつくまで継続する。
- 勝敗が決まった瞬間、勝者は「セーフ!」のポーズ、敗者は「アウト!」のジェスチャーを瞬時に取らなければならない。
- じゃんけんに勝っても、ジェスチャーを間違えたり遅れたりした場合は失点となる。
- これを繰り返し、先に3本先取した側が勝利となる。
公式に伝承される「野球拳の歌詞」
前田伍健が作詞した歌詞は、軽妙洒脱でありながら野球へのひたむきな情熱が描かれています。
「野球やりたや 練習はつらい 千本ノックは 涙の雨よ
(合いの手:アウト!セーフ!ヨヨイノヨイ)」
勝敗が決した際、敗者に課されるのは「服を脱ぐこと」ではなく、芸妓やお座敷の場であれば「お酒を一杯いただく」「罰として座を盛り上げる一発芸を披露する」といった、酒席の円滑なコミュニケーションを促す粋な計らいでした。