通常の切り傷であれば「傷痕を残さないよう綺麗に治す」ことが医療の基本ですが、スカリフィケーションは真逆のアプローチを取ります。「いかに綺麗に組織を盛り上がらせ、意図した瘢痕を作るか」という特異なアフターケアが要求されるため、経過の過酷さはタトゥーの比ではありません。
施術直後から初期段階にかけては、大量の浸出液(滲出液)と出血が続きます。組織の乾燥を防ぎながら、かつ異常感染を避けるためにラップやハイドロコロイド材による密封管理が行われますが、愛好家の中にはあえて過酸化水素水で消毒して治癒を遅らせたり、歯ブラシ等で物理的刺激を加えて肉芽形成を促進させたりする過激な手法を取る者もいます。こうした独流のアフターケアは、重篤な細菌感染症の温床となります。
術後1〜3か月で傷口は塞がりますが、赤く盛り上がった肉芽組織が白く落ち着いた瘢痕へと安定するまでには最低でも1年から2年以上の歳月を要します。施術箇所のツッパリ感やピリピリとした神経障害性疼痛が長期間残るケースも珍しくありません。