本作の持つ圧倒的な叙情性は、卓越したソングライティングとコードワークによって緻密に構築されています。ピアノを中心としたアコースティックなアンサンブルは、歌声のニュアンスを最大限に引き立てるよう計算し尽くされています。
楽曲の根底を支えるコード進行には、ベースラインが滑らかに下降していくクリシェ進行や、メジャーセブンス、テンションコードが絶妙なバランスで配置されています。これにより、単純な長調の明るさや短調の暗さでは表現できない、「切なさと温もりが同居する夕暮れのグラデーション」が見事な音像として具現化されています。
また、サビに向けて徐々に感情が高まり、転調とともに視界が一気に開けるようなメロディ展開は、リスナーの感情を一気に解放へと導くカタルシスを生み出します。ピアノの楽譜や弾き語りスコアを買い求める音楽ファンが後を絶たないのも、指先から奏でられる一音一音に、プレイヤー自身を浄化するような響きが宿っているからに他なりません。