映像作品における濡れ場や露出度の高いカットにおいて、前張りは「見えてはいけない部分を物理的に隠し、偶発的な接触や露出事故を防ぐ」という決定的な役割を担っています。
前張りの基本的な仕組みは、陰部を直接覆う「保護面」と、それを皮膚に密着させる「接着面」の二層構造で成り立っています。男性俳優の場合、性器全体をコンパクトにまとめて肌色の伸縮テープで下腹部や会頭部へ引き上げるように固定するのが通例です。一方、女性俳優の場合は、極小の布地や専用シリコンを陰部に当て、脚の付け根(鼠蹊部)に沿って目立たない極薄テープで固定します。
現場で使用される前貼りテープの種類と素材は、時代とともに劇的な進化を遂げてきました。
- 医療用マイクロポアテープ・スキントーンテープ:通気性と柔軟性に優れ、長時間の撮影でも肌への負担を最小限に抑える基本素材。
- 医療グレードシリコンパッド:摩擦による痛みを防ぎ、カメラに映り込んでも肌と同化する特殊成形品。
- ハイドロコロイド系保護材:汗や摩擦に強く、剥離時の表皮剥離(皮膚が一緒に剥がれるトラブル)を防ぐクッション材。
実際の現場では、スタイリストやメイクアップアーティストが俳優の体型や衣装のカットラインに合わせてミリ単位で成形します。激しい動きでも剥がれず、それでいてカメラの死角からは一切見えない立体裁断のような工夫が施されています。