検索エンジンで本作を調べると、サジェストキーワードに「実話 嘘」「嘘くさい」といった単語が並ぶことがあります。なぜこのような疑問が投げかけられるのでしょうか。
調査の結果、この背景には「あまりにも出来過ぎた美談に対する心理的バイアス」と「映画ならではの演出簡略化」の2点が関係していることが浮き彫りになりました。
まず、健康な20代女性が結婚直前に原因不明の病で倒れ、婚約者が数年間毎日通い詰め、記憶を失った彼女が再び恋に落ちて同じ式場で8年越しに結婚するというプロットは、フィクションの脚本家ですら「非現実的」と敬遠するほどドラマチックです。そのため、詳細な事実を知らないネットユーザーが「映画化のための創作ではないか」「過剰な演出ではないか」と疑ったことが噂の発端でした。
しかし、主婦の友社から刊行された原作本『8年越しの花嫁 キセキの実話』や当時の地元ニュース番組の取材アーカイブを検証すると、現実は映画以上に過酷でした。
実際には、麻衣さんの両親から「もう麻衣のことは諦めて、尚志さん自身の人生を生きてほしい」と何度も涙ながらに断られたエピソードや、尚志さんが睡眠時間を削って早朝5時に病室へ通い、全身マッサージを施していたこと、意識を取り戻した麻衣さんが尚志さんの名前すら思い出せず、恐怖心から目を逸らした日々の苦悩など、スクリーンに収まりきらなかった泥臭い葛藤が克明に記録されています。「嘘」どころか、真実は映画のダイジェストをはるかに凌駕する重みを持っていたのです。