本来は誤用である「嫁」という呼び方が、なぜこれほど日常会話に深く根付いているのでしょうか。そこには地域固有の言語文化と、サブカルチャーによる言葉の変容という2つの大きな要因が存在します。
まず大きな要因が、関西圏における方言的用法です。近畿地方の方言では、古くから親しみや愛着を込めて自分の妻を「嫁はん」「嫁さん」と呼ぶ文化が生活言語として根付いていました。1980年代から2000年代にかけて関西出身のお笑い芸人が全国区のバラエティ番組を席巻したことで、「うちの嫁がさぁ」という語り口が全国の若い世代へ急速に浸透していきました。
さらに2000年代初頭のインターネットコミュニティ(2ちゃんねる等)から発生した「俺の嫁」というオタク文化スラングも、この呼び方のカジュアル化を後押ししました。二次元キャラクターやアイドルに対する最大の愛着・推し表現として「〇〇は俺の嫁」というフレーズが定着し、言葉自体が持っていた「家制度の縛り」という重々しい印象が薄れ、ライトな愛称としての響きを獲得していった経緯があります。