ファンの間で最大の疑問として残ったのが、「なぜ山下智久は姿を見せず、声のみの出演だったのか」という点です。同窓生である新垣結衣さんや小池徹平さんらが実際にカメラの前で演技を披露したのに対し、山下さんだけが音声と文章のみにとどまった背景には、当時の芸能界における極めてデリケートな事情が存在していました。
当時、山下智久さんは2020年10月末をもって長年所属したジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT等の前身)を退所し、独立した直後でした。当時はまだ、大手芸能事務所を退所したタレントが民放キー局のプライム帯ドラマに即座に顔出し出演することに対して、業界内の慣例や見えない忖度が色濃く残っていた時期にあたります。ドラマ関係者の証言によると、現場の制作陣は早い段階から山下さんの出演を熱望していたものの、放送局の上層部や関係各所との権利調整、配慮すべき力学のハードルは極めて高かったとされています。
さらに物理的な要因として、当時の山下さんはハリウッド映画『マン・フロム・トロント』の撮影をはじめとする海外プロジェクトが本格化しており、日本国内での拘束を伴う撮影スケジュールの確保が極めて難航していました。こうした幾重の制約の中で、演出を手掛けた福澤克雄監督ら制作陣と山下さんサイドが「どうしても桜木先生に恩返しをしたい」「作品の世界観を壊さず生徒たちの絆を描きたい」と模索し尽くした結果導き出されたのが、「声の特別出演」という奇跡的なウルトラCでした。単なる妥協ではなく、阿部寛さん演じる桜木建二と矢島勇介の絆を最善の形で成立させたプロフェッショナルの決断だったと言えます。