大胸筋の成長が停滞したとき、まず見直すべきは負荷のかかり方です。フリーウェイトは重力方向(真下)にしか負荷が発生しないため、ダンベルフライのトップポジション(腕を閉じ切った状態)では負荷が胸から骨へと逃げてしまいます。対してケーブルトレーニングは、滑車とワイヤーによって負荷の方向を自由自在にコントロールできる点が決定的に異なります。
大胸筋の筋肥大メカニズムにおいて極めて重要な要素が「筋膜の伸張(メカニカルテンション)」と「筋肉の緊張持続時間(Time Under Tension: TUT)」です。ケーブルマシンは動作の初動から最大収縮(フィニッシュ)に至るまで、大胸筋に対して途切れることのない一定の張力を与え続けます。特に腕を内側に絞り込む内転動作の終末局面において、フリーウェイトでは決して得られない強烈な収縮刺激を生み出せるのが最大の強みです。
また、運動生理学の研究データや筋電図(EMG)測定においても、ケーブルクロスオーバーはフィニッシュ時の大胸筋内側および胸骨部における筋活動量がダンベル種目と比較して約28〜35%高い数値を記録しています。フラットベンチのプレス種目だけでは発達しにくい立体的な厚みとシャープなカットは、この持続的なテンションによってこそ形成されます。