エイを口にした際に「ツンとしたアンモニア臭がして食べられなかった」という経験を持つ人は少なくありません。この現象には、軟骨魚類特有の浸透圧調整機能が深く関係しています。エイは体内の水分バランスを海水に合わせるため、血液や筋肉中に高濃度の尿素を蓄えています。鮮度が落ちると、魚体表面の細菌が持つウレアーゼという酵素によって尿素が分解され、アンモニアが発生してしまうのです。
現代の水産加工現場では、水揚げ直後の急速冷却や徹底した血抜き処理が行われるため、流通している良質な干物から強烈な臭気が出ることはまずありません。万が一、手元にある乾燥エイヒレや干物に微細な臭気を感じる場合や、硬すぎて食感を損ねている場合は、エイの干物の下処理と戻し方を工夫することで劇的に改善します。
もっとも手軽で効果的な下処理は、「料理酒と少量の塩を加えたぬるま湯」に10〜15分ほど浸す方法です。アルコール分が揮発性化合物を包み込んで蒸発を促し、適度に水分を吸わせることで、炙った際の身のふっくら感が復活します。素干しの厚みがある干物(かすべ等の軟骨付き)を料理に使う場合は、一晩水に浸して冷蔵庫でゆっくり戻すと、軟骨のコリコリ感と肉の繊維感が心地よい状態に仕上がります。