不動明王の図柄を身体に刻む際、最も王道とされるのが「背中一面」の和彫りデザインです。神仏の尊顔を広大なキャンバスに堂々と据えることで、不動明王の放つ威厳と守護の力を余すところなく表現できます。
構図をさらに格式高いものにするのが、左右に従う「矜羯羅童子(こんがらどうじ)」と「制多迦童子(せいたかどうじ)」の二童子です。柔和で従順な矜羯羅童子と、活発で気性の荒い制多迦童子を配した「不動三尊」の構図は、調和と万全の守護体制を完成させる最高格のデザインとされています。
また、構図を決める上で極めて重要なのが「顔の向きや視線(左右)」です。不動明王の特徴である「天地眼(右目は天を睨み、左目は地を見つめる)」や、牙を上下互い違いに出す「天地歯」など、伝統の仏画規範に則った描き方が求められます。どちらの肩越しに見得を切らせるか、背景の岩座や滝とどう連動させるかは、彫師の技量と伝統への理解度が問われるポイントです。