エントランスに足を踏み入れると、集合ポストや館内案内板には個人名だけでなく、デザイン事務所、行政書士、Web制作、探偵事務所、個人サロンなどの屋号がびっしりと並んでいます。これがチサンマンション椿町の日常の風景です。
間取りの大半は1Rから1DK。専有スペースには3点ユニットバスとミニキッチンが備え付けられているものの、水回りを改装して完全なワークスペースとして使っている区画が目立ちます。現地で活動するグラフィックデザイナーの男性(30代)は次のように証言します。
「新幹線で東京のクライアントと打ち合わせをして、名駅に着いたら荷物を持ったまま5分でオフィスに戻れる。この機動力は他では手に入りません。築古なので防音性や共用部の薄暗さは否めませんが、家賃5万円台でこの立地に法人登記ができるメリットが圧倒的に勝ります」
一方で、純粋な「居住目的」で暮らす住民からは複雑な評判・口コミも散見されます。エレベーターの待ち時間や、不特定多数の来訪者が出入りするセキュリティ面への不安、深夜・早朝の人の動きなど、雑居ビル特有の環境に対する不満の声です。居住用マンションというよりも、「オフィス機能が主体のビジネスインキュベーション拠点」と捉えるのが実情に近いと言えます。